日本人が「音楽やる」と言えば、ほぼ「歌手」か「バンド」となるんじゃないでしょうか。21世紀の今でも、新人バンドがデビューする始末。バカの一つ覚えみたいにロックやJ-POPばかり。そして詞は紋切り型な恋愛もの。そろそろみんな、これがおかしいことに気付きませんか?

といっても、2017年現在のUSのヒットチャートを見たら・・・Trapだらけです。猫も杓子もトラップミュージック。もちろんATL好きの僕としては幸せな限りですが、あまりにも紋切り型のTrapだらけなので、さすがの僕も、これじゃJ-POPやJ-ROCKと同じじゃないかと思うほど。

しかし、一つだけ違うことがあります。

それは、USのヒップホップは、流れが早いこと。日本みたいに、1980年代の音楽が今も通用するなんて甘い世界ではありません。

僕は、南部地方の音楽を、4フェーズに分けています。最初のフェーズは前夜期。1989年〜くらいです。GetoBoysなんかはサウスの元祖と言われますが、サウンド的には西海岸のものと大差ありませんでした。特徴的なサウンドは、やはり2 Live Crewを中心としたマイアミ・ベースですね。これは現代のトラップミュージックに直接つながるものだと思います。ここからあの有名なMaster PのGhetto Dにつながっていきます。

二つ目のフェーズは、2001年〜のTrap聡明期。T.I.やJeezy、そしてGucci Maneなど、その後のトラップミュージックを形作る役者が揃います。サウンド的には、DJ Toomp、Cool & Dre、The Runners、J.U.S.T.I.C.E. League、Drumma Boy、Kane Beatz、Zaytovenなんかが活躍しました。トラップミュージックの名をT.I.が生み出したのもこのフェーズです。

三つ目のフェーズは、Lex Lugerショック。2010年のBMF、そしてFlockaveliが大ヒットして、上物きらきら系ダーティーサウスが全盛期を迎えました。

しかし、そんなLex Luger全盛期も長くは続きませんでした。現在のアンビエント系トラップミュージックにどうやって移行したかを慎重に探ってみたところ、明確な境目がありました。Futureのアルバムを見ると、2012年のPlutoはまだきらきら系ダーティーサウス。なのに2014年のHonestでは、もうアンビエント系にさしかかっています。

すると、2013年にきっかけがあるはずだ、と探ってみると、一つの作品に当たりました。

https://open.spotify.com/album/1r8dmj9V9ccKNlnLEtFuIH

ベテランラッパーJuicy JのStay Trippyです。Bandz A Make Her Dance、流行りましたねぇ。

Juicy Jはすごいです。最初のフェーズから活動してるようなベテランなのに、今までのサウンドを全部捨て去って、しかも後輩Wiz Khalifaのレーベルに所属し、最新の全く新しいサウンドを作り出した。このアルバムは革命的でした。Mike WiLL Made Itが上物きらきら系ダーティーサウスからアンビエント系トラップミュージックへの橋渡しをしたと言えます。

ということで、現在のアンビエント系トラップミュージックの第四フェーズは、2013年から始まったと言えます。

このように、極めて短期間に流行が移り変わり、プロデューサーもラッパーもその都度変化を求められるUSの音楽業界は、日本のそれに比べ、変化が大きくて聴き応えがあり、決してJ-POPやJ-ROCKのような紋切り型ではないと思っています。

もっとも、あまりにも流行りすぎると、かつてのGファンクのように、低質なコピーが氾濫して廃れてしまうことも考えられます。今、アンビエント系トラップミュージックはその危機にあると感じています。それくらい流行っているんですね。